一年の内で日の明るい(昼の)時間が一番長い日といえば、夏至の日です。
きっと、誰もが良くご存じの事かと思います。
それとは別に、夏至は二十四節気の一つとなっています。
もしかしたら、えっ?!と思った方もいらっしゃるかもしれませんが、夏至は、二十四節気において立春から数えて10番目の節気です。
ここでは、二十四節気や七十二候の観点から、夏至の持つ意味やその季節を見て行くことといたします。
夏至の意味とは?
早速ですが、二十四節気の解説書として用いられることの多い「こよみ便覧」の記載を見てみましょう。
夏至の欄には、
「陽ねつ至極し 又 日の長きのいたりなるをもってなり」
とあります。
※実際の記載を見てみたい場合は、こちらへどうぞ! ⇒「こよみ便覧」(コマ番号は「7」を入力してください)
夏至は先にも書いたとおり、昼の長さが一番長い日となりますから「日の長きのいたりなる」は、ご理解いただけると思います。
問題なのは、その前にある「陽ねつ至極し」です。
言葉が前後しますが、「至極」の持つ意味の中には
- 極限・極致に達していること。この上ないこと。また、そのさま
- その状態・程度が、これ以上はないというところまでいっているさま
というものがあります。
次いで「陽ねつ」を考えると、この陽は太陽の「陽」、ねつは「熱」ですから、直訳すると「太陽の熱が上限に達している」といった意味になります。
もう少し柔らかい言葉にすると、「太陽の熱が限りなく降り注ぐ」といった具合でしょう。
えっ?真夏でもないのに?と思われたかもしれません。
でも二十四節気においての夏至は、夏の真ん中(後半に入る最初)に当たる節気となっていることを、申し添えます。
ここで、まとめます!
「太陽の熱が限りなく注ぎ、昼の時間(明るい時間)が一番長い日だから(夏至)である」
こよみ便覧の記載は、このように訳すことができます。
七十二候で見る夏至の季節!
さて、ここからは七十二候の言葉を借りて、夏至の季節を見て行きましょう。
七十二候では、1つの節気が「初候・次候・末候」に分けられており、それぞれに季節を表す言葉が付されています。
それでは、夏至の初候から、順にお届けいたします^ ^
夏至 初候 乃東枯
「乃東枯(なつかれくさかれる)」
※「なつかれくさかるる」とも読まれます。
夏枯草が、枯れる季節を表しています。
「乃東」は夏枯草の古名で、和名はウツボグサです。
夏枯草は、冬至の頃に芽を出して紫色の花を咲かせます。
花を咲かせた花穂は次第に茶色へと変色するのですが、その色が枯れているように見えることから、「枯れる」という表現が用いられています。
変わりますが、ちょうどこの頃に解禁となるのが鮎釣りです。
川釣りが好きな方は、待ってました!というところかと思います。
鮎と言えば、「塩焼きでしょ」と思っていたのですが、滋賀県には小鮎を山椒などと煮た名産品がありました。
これなら、山椒が川魚独特の臭いを消してくれるでしょうから、川魚が苦手な人でも食べることができるのかな?と思ったのでご紹介いたします。
夏至 次候 菖蒲華
「菖蒲華(あやめはなさく)」
菖蒲の花が咲く季節を、表しています。
ここでは菖蒲を「あやめ」と読んでいますが、咲く花は「花菖蒲」を指しています。
それぞれの開花時期をみてみると
- あやめ:5月中旬~下旬
- 花菖蒲:6月~7月中旬
です。
夏至は、例年6月21日頃に訪れるますから、花菖蒲が相応だとご理解いただける事と思います。
さて、この時期に旬を迎えるのが、「みょうが」です。
刻んで味噌汁に放したり、冷奴の薬味にしても美味しくいただくことができます。
みょうがといえば、子供の頃に、みょうがを食べ過ぎると物忘れがひどくなると言われた事を思い出します。
この話は迷信なのですが、古くから言い伝えられている事には、それなりの由来がありました。
詳しく解るHPがありましたので、良かったらご覧ください。
⇒「名荷(みょうが)を食べると物忘れする」
夏至 末候 半夏生
「半夏生(はんげしょうず)」
半夏(からすびしゃく)が生え始める季節を、表しています。
「半夏生」の文字を見て、雑節の半夏生を思い浮かべた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
雑節の半夏生については、こちらの記事をご覧ください。
さて、夏至の末候は7月1日頃から始まるのですが、時を同じくして京都では祇園祭が始まります。
7月1日に始まり、丸々1ヶ月を使って行われる、とても長いお祭りです。
そして、ちょうど7月に旬を迎える魚が「はも」です。
はもは小骨が多く、骨切りをしないと料理することが出来ないことでも、良く知られている魚かと思います。
高級魚のイメージがありますが、関西方面では普通に食卓に上る一般的な魚です。
湯引きや煮つけ、フライにしても美味しくいただくことができます。
最後に・・・
「麦藁蛸に祭鱧」という言葉は、ご存じですか?
これは、「タコは麦の収穫時期に当たる6月、鱧は夏祭りの頃が美味しい」という意味で、それぞれ旬の時期を表した言葉です。
そして、夏祭りは何かというと、天神祭(大阪)や祇園祭(京都)を指しています。
どちらの祭りも、祭り料理に「はも」は欠かせないものとなっており、京都の祇園祭においては「鱧祭り」という別名を持つほどとなっています。
≪参考≫
現代こよみ読み解き事典 / 岡田芳朗 阿久根末忠 編著
日本の七十二候を楽しむ -旧暦のある暮らし- / 白井明大 有賀一広
旧暦で楽しむ日本の四季 二十四節気と七十二候 / 別冊宝島編集部編
鱧(はも)/ 日本の旬・魚のお話 / 新港魚類株式売社
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