残暑も少しずつ落ち着きをみせ、秋を感じ始める9月・・・
中旬を過ぎると、秋のお彼岸に入ります。
秋のお彼岸は、秋分の日を中日とした前後三日間です。
さて、この秋分の日は祝日であることから、みなさん良くご存じかと思いますが、二十四節気において16番目の節気「秋分」の初日に当たる日となっています。
そこで、今回は祝日の秋分の日ではなく、二十四節気においての秋分の意味や季節を、こよみ便覧や七十二候の言葉を借りてお届けいたします。
二十四節気 秋分の意味とは?
始めに、二十四節気の解説書をして用いられる「こよみ便覧」の記載を基に、秋分の意味を紐解いていきます。
「こよみ便覧」で秋分の欄を見ると、
「陰陽の中分なればなり」
とあります。
これを今の言葉で書くと、
「陰と陽が中分だから(秋分)である」
となります。
もしかしたら、すでにピンときた方がいらっしゃるかもしれませんが、もう少し説明を加えます。
あまり聞きなれない中分には、どちらにも片寄らないという意味があります。
そこから考えると、陰と陽には夜と昼を当てるのが適切でしょう。
これらをまとめると、
「夜と昼の長さが同じだから(秋分)である」
となります。
一般的に「陰陽の中分となればなり」と読まれていますが、漢字や(変体)仮名を確認したところ、こよみ便覧の記載には「と」の表記が確認できなかったため、ここでは「陰陽の中分なればなり」としています。
実際に、こよみ便覧の記載を確認したい場合は、こちらをご覧ください。
⇒「こよみ便覧」(コマ番号に「7」を入力してください)
秋分はどんな季節なの?
ここからは、七十二候の言葉を基に秋分の季節を見ていきたいと思います。
七十二候は、1つの節気を「初候・次候・末候」の3つに区切り、それぞれに季節を表す言葉が付されています。
それでは、初候から順にご覧ください。
秋分 初候 雷乃収声
「雷乃収声(かみなりこえをおさむ)」
※「かみなりすなわちこえをおさむ」とも読まれます。
雷が鳴り響かなくなる季節を、表しています。
晴れた日の空には、夏の入道雲に代わってイワシ雲が姿を現すようになります。
イワシ雲という名前は、イワシ漁がある頃に現れるから、もしくは雲がイワシの群れに見える事から付けられたと言われています。
突然ですが、松茸はお好きですか?
調度この頃から、松茸が旬を迎えます。
「匂い松茸味しめじ」と言われるように、独特のいい香りを漂わせるキノコです。
日本では、秋の味覚の代表格といっても、言い過ぎではないでしょう。
松茸ご飯や土瓶蒸し、茶碗蒸しに入れてもいいですね^ ^
松茸は、免疫力の増強やガンの抑制、不整脈や夏バテの防止、便秘の予防や美肌、といった効能・効果を持っています。
そして、誰もがそそられるだろう松茸の香りには、食欲増進や気持ちを落ち着かせる作用があります。
秋分 次候 蟄虫坏戸
「蟄虫坏戸(むしかくれてとをふさぐ)」
※「すごもりのむしとをとざす」とも読まれます。
「蟄虫坯戸」と書かれている場合もありますが、「坯」は「坏」の俗字です。
冬ごもりをする虫が、冬眠の為に地中へ堀った穴に入り、その穴を塞ぐ季節を表しています。
簡単にいうと、春から夏と活動していた生物たちが冬ごもりの準備をする頃です。
冬ごもりをする虫といえば、幼虫のまま地中で冬を過ごすカブトムシなどの昆虫を思い浮かべるかもしれませんが、ここでの虫は蛇やカエルなどの生物も含んでいます。
といったところで、蛇やカエルを虫と呼ぶ事は、考えられない事ではないでしょうか。
なぜそのような解釈になるのか?理由をあげると、
- 漢字の虫は、元をたどれば蛇(特にマムシ)を表す象形文字からきている
- 虫の正字は蟲であり、昆虫など小さな生物だけではなく爬虫類や両生類、魚類などを含む生物全般を表す文字である
といった、「虫」という漢字の持つ特性によるものということができます。
さて、季節を表す言葉の説明はこのくらいにして、旬のものをひとつご紹介したいと思います。
それは、サンマです。
サンマが一番脂の乗っている時期は9月初旬~10月末となっていますから、この時期は旬の真っただ中に当たります。
脂の乗ったサンマを炭火焼き!なんて、サイコーですよね^ ^
もっと贅沢をするとしたら、サンマの刺身がおススメです。
大振りで脂が乗っている事に加えて、新鮮なものでしか味わえない貴重な秋の味覚です。
秋分 末候 水始涸
「水始涸(みずはじめてかるる)」
※「みずはじめてかる」もしくは「みずはじめてかれる」とも読まれます。
水田の水を抜き、収穫の準備に入る季節を表しています。
お米が好きな人にとっては、新米が楽しみになる頃かもしれません。
そして、お米より一足先に収穫期となるレンコンが、旬を迎える時期となります。
もしかしたら意外かもしれませんが、レンコンはビタミンCを豊富に含む食物です。
しかも、レンコンに多く含まれている澱粉のおかげで、他の野菜のように加熱によるビタミンCの損失が多くないという特徴があります。
これまた、ビックリではないでしょうか^ ^
この他にも、カリウムやタンニン、食物繊維をはじめ、ビタミンB6や、野菜には珍しいビタミンB12も含んでいます。
煮たり炒めたり、生でもOK!なレンコンですが、切った後の変色が気になるところかもしれません。
その場合は、切った後に真水若しくは薄い酢水に5分程度つけると、色止めになります。
真水はホクホクとした食感、酢水だとシャキシャキした食感になりますから、用途に応じて替えていただければと思います。
もちろん、変色が気にならない場合は、そのまま使っていただいてもかまいません。
最後に・・・
二十四節気での秋分は、冒頭にもある通り秋分の日から始まり、その期間は次の節気である寒露の前日までとなります。
2023年は秋分の日が9月23日で、その期間は10月7日までです。
暦上での秋分は、秋の季節が後半に入る最初の節気となっています。
ただ実際には、日中は暑くても日が陰ると風が冷たく感じたりして、ほんの少しだけ秋の気配を感じる頃かもしれません。
《参考》
現代こよみ読み解き事典 / 岡田芳朗 阿久根末忠 編著
旧暦で楽しむ日本の四季 二十四節気と七十二候 / 別冊宝島編集部編著
日本の七十二候を楽しむ -旧暦のある暮らし- / 白井明大・有賀一広
まつたけの香りがもつ体に嬉しい効果とは? / (一財)日本educe食育総合研究所
「蟲」という漢字は「むし」と読むようですが、「虫」とは何か意味が違うのですか? / 漢字Q&A 漢字文化資料館
【レンコンの栄養】美容にも健康にも効果アリ!調理法や食べ方を紹介 / E・レシピ
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