8月も終わりに近づき、ほんの少しだけ秋の気配が見え隠れする頃、二十四節気では処暑を迎えます。
とはいえ、実際にはまだまだ残暑が厳しい時期です。
きっと「この暑さ、いつまで続くのかしら?!いいかげん涼しくなって欲しいわ!!」と、多くの方が思うような頃かと思います。
処暑は、二十四節気において14番目の節気です。
どうしてこの時期を処暑と呼んだのか?が解る処暑の持つ意味やその季節を、詳しくまとめました。
もちろん!今年の処暑の日(期間)も解ります。
処暑の意味とは?
早速、この節季を処暑と呼んだのはなぜなのか?
処暑の持つ意味を、こよみ便覧の記載から読み解いていきたいと思います。
こよみ便覧で処暑の記載を見てみると、
「陽気とどま里て初て志りぞ記やまんとすれば那里」
とありますが、これでは読みにくいのではないでしょうか。
現代風に書き直すと、
「陽気とどまりて初めて退きやまんとすればなり」
となります。
※こよみ便覧にある実際の記載を確認したい場合は、こちらからどうぞ^ ^
⇒「こよみ便覧」(コマ番号「7」になります)
それでは、この記載を、もう少し解かり易くかみ砕いていきますね!
ここでの陽気は夏の陽気を表しており、夏の暑さを指している事は、なんとなくでもお分かりいただけるかと思います。
その陽気が、初めて退いて止もうとしているとありますから、「夏の暑さも落ち着いて、気温の変化を初めて感じることができる」ということができます。
例えば、日中は真夏と変わらず暑い日だとしても、日が落ちた後はどことなく風が冷いように感じるというような、真夏とのわずかな違いを初めて感じることができる季節と思っていただければいいでしょう。
こういった事を踏まえたうえで(あくまで筆者個人の解釈になります)処暑の意味を考えると、
「夏の暑さも峠を越し、徐々に涼しくなってくる季節だから(処暑)である」
となります。
ちなみに・・・処暑の「処」は、一文字で「おく・すえる・おちつかせる」という意味を持っています。
処暑とはどんな季節なの?
さて、処暑の意味が解ったことですし、ここからは処暑の季節を七十二候の言葉とともに見ていきましょう。
七十二候では、処暑という1つの節気を、初候・次候・末候の3つに区分したうえで、それぞれに季節を表す言葉が付されています。
さっそく、初候からいきますね^ ^
処暑 初候 綿柎開
「綿柎開(わたのはなしべひらく)」
綿の萼が開き始める時期、つまり白い綿花が顔を出し始める季節を表しています。
※柎:花の萼
ここで、綿花について少しだけ・・・
白くふわふわした綿花は、果実であって花ではありません。
本当の花は、こちらです。
↓ ↓ ↓
花が落ちた後に膨らんだ種子がはじけると、フワフワで白い綿花があらわれます。
日本において綿の栽培が盛んになったのは16世紀以降で、それ以前は中国などから輸入する高級品として扱われていました。
今では、植木鉢で手軽に育てられることもあり、園芸用としても人気となっています。
また、この頃になると、赤とんぼが姿を現します。
とんぼは夏の間も飛んでいますが、赤とんぼを見つけると秋の訪れを感じる方も多いのではないでしょうか。
日本の秋といえば、紅葉ですよね?!
もしかしたらトンボの持つ赤い色が、紅葉の赤色を連想させているのかもしれません。
処暑 次候 天地始粛
「天地始粛(てんちはじめてさむし)」
ようやく暑さが収まる季節を、表しています。
ここで「さむし」と読ませている「粛」には、
- つつしむ・おごそか・身を引きしめる
- ただす・いましめる・きびしくする
という意味があります。
自然を擬人化したような表現になりますが、「天地ともに暑さを慎む」こんな風に訳すと伝わりやすいかな?と思います。
変わりますが、日が暮れると虫の声が聞こえてくるようになるのもこの時期です。
鈴虫やマツムシ、クツワムシなどが鳴き始め、その声に涼しさを感じたり、改めて秋を実感するそんな季節を迎えます。
静まり返った秋の夜に鳴り響く済んだ虫の声を聴いて、風流だなぁ~と感じるのは、日本人独特の感性だとか・・・
処暑 末候 禾乃登
「禾乃登
(こくものすなわちみのる)」
様々な穀物が実る季節を、表しています。
※稲が色づきが実る季節とも言われます。
「禾」は、稲そのものを指すだけでなく、穀物の総称という意味を併せ持ちます。
そして、恐らくではありますが「登」が「みのる」と読み下されていることに、違和感を覚えてはいませんか?
調べたところ、「登」を「みのる」と読んで
- 穀物が熟する
- 穂を立てて実を上につける
という意味がありました。
これで、つながりますね^ ^
ちょうどこの頃、秋の七草のひとつ藤袴が開花期を迎えます。
ピンク色の小さな花が房状に咲く可愛らしい花なのですが、珍しい事に、花には香りがありません。
ただ、生乾きの茎葉からはクマリンと呼ばれる桜餅の葉に似た甘い香りが漂うそうです。
平安時代には、藤袴の花を愛でることも盛んではありましたが、乾燥した茎葉を匂い袋にして身につけたり、着物に焚き染めたりと、香り草として珍重されていました。
万葉の時代から長きに渡って親しまれてきた藤袴ですが、今では自生できる環境が少なくなったことで、絶滅危惧種に指定されているというのは、なんとも悲しい現実です。
2024年の処暑はいつ?
処暑とは、一般的に処暑の日を指していいますが、次の節気である白露の前日までの期間を指す場合もあります。
今年(2024年)は、
- 処暑の日:8月23日(火)
- 処暑の期間:8月23日~9月6日迄
です。
ついでと言っては何ですが、来年(2025年)は?というと、処暑の日は8月22日、期間は8月22日~9月6日迄となっています。
最後に・・・
日中は、暑い日が続いていても、ふとした時に秋を感じてしまう。
そんな季節が、処暑です。
これから訪れる本格的な秋にむけて、レジャーの計画を立てたりするにもいい時期かもしれません。
そして、言うまでもありませんが、この頃を境に収穫の秋(食欲の秋)を迎えますwww
旬を迎える食べ物に舌鼓!もありですが、収穫祭が起源となる秋祭りが各地で開催される時期です。
みなさん、それぞれ、自分なりの楽しい秋を過ごしていただけたらいいなぁ~と思いつつ、この記事を閉じたいと思います。
《参考》
旧暦で楽しむ日本の四季 二十四節気と七十二候 / 別冊宝島編集部編
現代こよみ読み解き事典 / 岡田芳朗・阿久根末忠編著
二十四節気「処暑」は次候「天地始粛」に移っています / tenki.jp
「禾」という漢字 / 漢字/緩和/語源辞典
フジバカマ / みんなの趣味の園芸 NHK出版
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