暦の選日のひとつに、丙午があります。
「丙午生まれの女性は性格がキツイ」
「なんだか気性が激しいと思ったら、丙午生まれなんだって」
いつかどこかで、こんな言葉を聞いたことはありませんか?
確かに気性の激しい女性が丙午生まれだったという経験はありますが、必ずしもそうとは限りません。
では、どうして丙午生まれだけが、そんな風に言われるようになったのでしょうか。
そこには、ある女性の悲しい物語が絡んでいました。
ここでは、
- 丙午とはどんな日?
- 丙午生まれの女性は性格がキツイといわれるようになったのはなぜ?
この二つを柱にして、お届けいたします。
丙午とはどんな日の事をいうの?
暦においての丙午は、先にも書いた通り選日の一つです。
選日は、暦の暦注の中で六曜(七曜)や十二直に含まれないものの総称で、雑注と呼ばれることもあります。
その性質は、六十干支の組み合わせによって吉凶を判断するというものです。
ところが、丙午だけは他の選日と異なり、生まれ年による吉凶となっています。
六十干支は、十干と十二支の組み合わせからなるもので、六十年に一度同じ年が回ってきます。
ちなみに、一番近い丙午生まれは1966年で、その方の年齢は2022年の誕生日を迎えると56歳です。
次に丙午の年が訪れるのは、2026年となります。
こちらの記事に六十干支一覧表がありますので、よかったらご覧ください。
丙午生まれの女性は性格がキツイと言われるようになったのはなぜ?
最初に結論を申し上げると、「丙午生まれの女性は性格がキツイ」は迷信です。
では、どうしてこの迷信が古くから今まで続いているのでしょうか。
それには、中国から伝わった陰陽五行説での丙午と、日本の「八百屋お七」の話が関わっています。
陰陽五行説での丙午
始めに、陰陽五行説は陰陽説と五行説が交わったものという事を、あえてお伝えいたします。
そして「丙午」は、先にもあるように、十干と十二支の組み合わせとなっています。
この二つの事を踏まえた上で、丙午を見ると
- 陰陽説:丙も午も陽の気をもつ
- 五行説:丙も午も火性に属する
という具合です。
陰陽五行説においての丙午は、陽の気を持つ火性が重なることから、その年は火災が多いとされています。
八百屋お七の話とはどんな話なの?
八百屋お七は実在の人物と言われていますが、その生涯については様々書かれています。
その中でも、信憑性が高いとされている話は以下の通りです。
お七の家は天和2年12月28日(1683年1月25日)の大火(天和の大火)で焼けてしまい、焼け出されたお七一家は正仙院に非難しました。
お寺で避難生活をしているうちに、お七は寺小姓の生田庄之介と恋仲になります。
やがて家(店)が建て直されて、お七一家は自宅に戻るのですが、お七の庄之介への想いは募る一方でした。
そこでもう一度自宅が燃えれば、また庄之介がいるお寺で暮らすことができるという考えが生まれ、庄之介に会いたい一心で自宅に放火したのです。
その火はすぐに消し止められ小火に留まりましたが、お七は放火の罪で捕縛されて鈴ヶ森刑場で火あぶりの刑に処されました。
なお正田庄之介は、吉三郎、吉三(さっき、きちざ)、山田佐兵衛といった、複数の異なった名前で書かれているということを、併せてお伝えいたします。
丙午生まれの女性は気性がキツイと言われる事についての考察
先にも書いた通り、丙午生まれの女性は気性がキツイと言われる要因は、中国から伝わった丙午の性質と、元々日本にあった八百屋お七の話が結びついた事に始まります。
とはいえ、なぜにどうしてそうなったのでしょうか。
だって、思いこがれた人に会いたいと思う気持ちは、今も昔も変わらないものだと思いませんか?
それでも自宅に放火した行為は、どう考えても行き過ぎではありますが、それほどまでに相手に対する思いが強かったのだと推測します。
ただ、こんな風に通常ではあり得ない行動をとったお七の生まれ年は丙午でした。
このことから、「丙午生まれの女性」という限定性が生れたという事ができます。
ただ上記にある話が、どう変化して「丙午生まれの女性は気性がキツイ」と言われるようになったのか?については、歴史的な根拠は何一つありません。
あくまで推測になりますが、お七の話が広がるほど他人の印象に残るものだけが伝わり、そこに尾ひれ葉ひれが付いたのでしょう。
例えば、
⇩
丙午生まれの女性が、恋心を抱いた男性に会いたい一心で実家に放火した
⇩
丙午生まれの女性は、本気になったら恐ろしい
⇩
丙午生まれの女性は性格がキツイ
極端ではありますが、こんな具合ではないかと考えます。
古くには、「丙午生まれの女は男や亭主を骨になるまで食い殺す」という話も飛び出しました。
当然、何の根拠もない話です。
それでも、この話が広がると、
- 丙午の年には出産を控る
- 丙午生まれの女性とは結婚しない
といった現象が起こりました。
「人の口に戸は立てられない」とは言いますが、噂話は今も昔もねじれて大きくなるものだなぁと感じているところです。
最後に・・・
いくつかある暦の選日でも、ここまで根拠のないものはありません。
それであっても「丙午生まれだから・・・」と、今でも言葉として発せられるのは、偶然の一致が多いからなのでしょうか。
なぞは、深まるばかりです。
《参考》
現代こよみ読み解き事典 / 岡田芳朗 阿久根末忠 編著
八百屋お七の七変化 / IISE 国際社会経済研究所
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