グレゴリオ暦(太陽暦)が採用されて、今のようなカレンダーが主流になるまでに、日本では様々な暦が利用されてきました。
たくさんある暦の中でも、江戸時代に大流行したのが「大小暦」です。
ところで、大小と聞いて何か思い浮かぶことはありませんか?
そう!大の月と小の月です。
大小暦の大小は、大の月・小の月からきています。
大の月・小の月・・・ご存知ですか?
大の月 小の月とは?
現代では、1ヶ月に31日ある月が大の月、それ以外の月は小の月と決まっていますが、初めからそう決まっていたわけではありません。
大小暦が流行した江戸時代は、言うまでもありませんが太陰太陽暦が利用されていました。
太陰太陽暦は、太陰暦の流れを汲んでいますから、基本的に月が満ち欠けする周期に合わせて1ヶ月を定めていました。
一言でいうと、新月の日から次の新月の前日までが1ヶ月という具合です。
当時は、月が地球を回る周期が約29.5日であることから、30日と29日の月を作って、
- 30日の月を大の月
- 29日の月を小の月
と呼んでおり、大小の月を交互に並べていました。
ただ、端数が積もり積もると誤差が生まれます。
なんとなくでもお気づきかと思いますが、端数が積み重なって1日になるごとに、閏月を作ることで解消していました。
※この閏月という考え方は、太陽暦のもつものです。
これがまた現在では考えられない事なのですが、2~3年に一度は13ヶ月ある年を作って調整していたのだそうです。
大の月と小の月の順番は?
現在は「2・4・6・9・11」月が小の月で、残る「1・3・5・7・8・12」月が大の月となることはご存知の通りなのですが、旧暦ではこのような規則性はありませんでした。
先に「大小の月を交互に並べていました」と書いてあるのになんで?と、思われるかもしれません。
そこに絡んでくるのが、月が地球を回る周期(月の満ち欠け)になります。
「約29.5日」は、月が地球を回る周期の平均値で、実際の周期は約29.27~29.83日の間で変化しているものです。
平均値で決めた場合はほぼ交互(大の月が少し多い)になりますが、実際の周期を使って決めた場合は多くのパターンが生まれます。
これも今では考えられない事かと思いますが、大の月が3回並ぶとか、小の月が2回並ぶということもありました。
大の月と小の月!旧暦で知りたい場合はどうする?
ここまでくると、暦に興味がある方限定になってしまうのかもしれませんが、
旧暦において、大の月小の月の配置はどうなっていたんだろう? とか
今を旧暦で引き直すと、どうなるんだろう?
という方のために、これは解りやすいと思った求め方をご紹介いたします。
旧暦での月の大小の求め方
旧暦での大小月は、月初め(朔日)が決まってからの結果となるのだそうです。
ここでは、2018年を例にして説明したいと思います。
2018年から3か月を選んで、旧暦朔日とそれに対応する新暦の日にちを上げると
- 旧暦6月1日=新暦7月13日
- 旧暦7月1日=新暦8月11日
- 旧暦8月1日=新暦9月10日
です。
まず旧暦6月ですが、新暦でみると7月13日~8月10日までとなり、この間の日数が30日なので大の月となります。
同様に、旧暦7月は、新暦で8月11日~9月9日までの30日で大の月という具合です。
ただ、ここで問題なのは、旧暦の求め方ではないでしょうか?!
カレンダーによって旧暦の日付が記載されていたりするものもありますが、そうでない物の方が多いのが現実です。
いい機会なので、とっても便利なサイトをご紹介いたします。
⇒「新暦・旧暦変換」
このサイトでは、旧暦から新暦への変換だけでなく、新暦を旧暦に変換することもできますから、仮に未来日であっても旧暦での大小月を求めることができてしまいます。
大小暦とは?
それではここで、江戸時代に流行した大小暦について簡単に触れておきたいと思います。
大小暦は今月が大の月か小の月かを表した暦で、本来は「大小」と言われるものです。
※大小暦とよばれるようになったのは、明治時代からになります。
単純と言ってしまえばそれまでなのですが、当時の人々にとって大の月か小の月かを知ることは、とても重要なことでした。
なぜか?というと、江戸時代頃の買い物はほとんどが「つけ」で、晦日払い(月末払)もしくは盆暮払い(お盆と年末に払う)だったからです。
なんとなく、想像がつきませんか?
月の大小を間違えて、一日早い集金に来られた日には、たまったもんじゃないって話ですwww
逆に、一日遅く集金に行くとツケを払ってもらえないばかりか、朔日早々縁起でもないと文句を言われる羽目になってしまうという、これまた困ったことになっていました。
そんなこんなで、江戸時代の商家やお寺など人の出入りが多いところには、一枚の板に裏表で「大小」の文字を刻んだ告知板が掛けてあったと言われています。
さまざまな大小暦
そもそも、大の月と小の月の並べ方だけを示していた大小暦なのですが、しだいに絵や文章の中に月の大小と配列を組み込んだものへと変化していきました。
当時の人々の洒落好きがそうさせたのかどうかは定かではありませんが、とにかくたくさんの大小暦が生まれたことだけは確かです。
年の初めには「大小会」を開いて大小暦を交換したり、大小暦を贈り物として配ることもあったそうです。
せっかくなので、大小暦をふたつみっつご紹介したいと思います。
着物雛型
これは、着物の柄として大小を施しています。
右上から1月、2月とみていくのですが、同じ柄が重なっている8月は、大が8月で小は閏8月となります。
書斎
色々と文字が書かれてはいますが、月の大小は右側にまとめて書いてあるので、解りやすいかと思います。
この大小暦は、羽州山形十日町(現:山形市十日町)の御用書物所「崑崘堂」北條忠兵衛が、店の宣伝用に配った物と思われています。
大小句
大小暦には、絵をモチーフにしたものだけでなく、文字(言葉)で大小を表したものもありました。
この大小暦は、月の大小を表示するとともに、各月の朔日の干支を俳句にして読み込んだもので、右から1月、2月と進んでいきます。
最初の「小」が1月ですから、1月・小の月・1日の干支が寅(下から3文字目)という具合です。
この年は、9月の次が閏9月となっています。
もし、古い時代の月の大小を知りたい場合は、こちらの一覧表が役立ちます。
⇒「いろいろな暦」
※リンク先を少し下がっていただくと「大小対照表」があります。
大の月と小の月!どんな覚え方があるの?
話は変わりますが、現代での大の月と小の月を簡単に覚える方法を探していらっしゃる方が多いようです。
その方法を・・・と思ったのですが、ネット上ではあちらこちらで紹介されているようで・・・(汗;
同じものにはなりますが、自分がまだ小学生の頃、親に教えてもらった方法を2つあげてこの記事を閉じたいと思います。
げんこつを作った時にできる節で数える方法
右手でグーを作ってください。
※左手でも、やることは変わりありません。
手の甲をみると、指の付け根の骨が山になって、その間に谷ができていると思います。
この時の山が「大の月」で、谷が「小の月」になるというものです。
その方法は、人差し指の山を「1」として数えていき、小指の山で「7」・「8」と二回数えて折り返します。
こんな感じです。
こぶしを使う方法は、これだけだと思っていたのですが、別の数え方もあることが解りましたのでご紹介いたします。
人差し指のこぶしから数えていくのは先の方法と同じなのですが、小指で「7」、また人差し指に戻って「8」・・・と数える方法です。
こちらを図にすると、こうなります。
語呂合わせで覚える方法
「にしむくさむらい小の月」
ネット上では、「西向く侍」と多く書かれています。
あぁ~これね!と、思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
これは、小の月が何月か?を覚える語呂合わせで、その他の月が大の月になるというものです。
ここで、ぶっちゃけます。
「にしむくさむらい」を教えてもらった時に、一番に気になったのが「さむらい」でした。
なんで「さむらい」なの?という問いかけに、11月の「11」を漢字で書くと「十一」になって、縦書きだと武士の「士」に見立てられるからという答えが返ってきたのを覚えています。
そして「にしむく」ですが、「2・4・6・9」をそのまま読んでいるものと思っていたので「西向く」と書かれている物を見て、こう書くんだぁ~と新たな発見をしたことは事実です。
※「6」が「む」と読まれることに違和感がある方もいらっしゃるかもしれませんが、「いちにさんし・・・」を「ひぃふぅみぃ・・・」と数えていた頃「6」は「む」でした。
また「さむらい」も「士」ではなく「侍」と書かれていることに、なるほどねぇ~と思いつつ、ちょっとした違和感を覚えたりしていました。
賛否両論あるかとは思いますが、個人的には「二・四・六・九・士 小の月」がしっくり来るというのが本音です。
《参考》
月の暦の大と小 / 暦Wiki 国立天文台
旧暦月の大小の決まり? / 暦のページ
現代こよみ読み解き辞典 / 岡田芳朗 阿久根末忠 編著
コメント
げんこつでやる一番目の方法、フランス人に初めて教えてもらいました。36年前パリに住んでいたときです。私は西向く士しか知らなかったし、日本人でげんこつでやっている人を全く今まで見たことがありませんでしたので、げんこつでやる方法は、フランス方式だと今まで信じていました。日本でもやってい人がいたなんて驚きです!
kazさん
コメントありがとうございます。
フランス人の方が知っていたとは、びっくりしました。
日本通の方だったのかなぁ~と、思っているところです。