突然ですが、質問です。
「縁日」という言葉を聞いて、あなたは何を思い浮かべますか?
もしかしたら、露店や屋台の立ち並ぶ風景をイメージされた方が多いのではないでしょうか。
確かに、お祭りには欠かせない風景です。
でも、本来の「縁日」は神仏に関わるもので、暦にも多く書かれています。
さっそくですが、縁日は本来どういった日なのか?というところから話を始めたいと思います。
縁日とは?
そもそも縁日は、ある特定の神仏に縁のある日を指し、有縁の日や結縁の日が略された言葉と言われています。
有縁と結縁の意味は
- 有縁:仏や菩薩などに会い、教えを聞く縁があること
- 結縁:仏や菩薩が、世の人を救うために手をさしのべて縁を結ぶこと
です。
縁日に神仏を参詣すると、普段より以上にご加護を得ることが出来ると信じられています。
縁日の始まりがいつなのかは定かではありませんが、平安時代より以前からあったことが文献にて明確となっています。
※今昔物語(平安時代)や古今著聞集(鎌倉時代)に、縁日の記載あり。
古い時代、縁日は年に一度でしたが、参詣者の増加に伴い毎月となり、多いものでは月に数回と増えていきました。
また縁日の日は、ほどんどの神仏が毎月〇日と日にちが決まっています。
ただ一部の神仏は、十二支や六十干支だけを示して日にちを明確にしないものもあります。
主な神仏とその縁日は、以下の通りです。
主な神仏とその縁日!
どうまとめたら解り易くなるのか?とても迷ったのですが、
- 決まった日を縁日としている神仏
- 日にちを明確にしていない神仏
に分けて、列記することにしました。
なお、決まった日が縁日になっている神仏は、縁日の日にちが早い順に並べています。
決まった日を縁日としている神仏と縁日
◎元三大師 縁日:正月三日
元三大師は、天台宗の高僧である良源の通称です。
縁日の日にちは良源の忌日に由来し、天台宗の縁日とされています。
良源は元三大師以外にも異なった名前で呼ばれており、様々な厄除けの神様としても知られています。
そのあたりは、こちらの記事をご覧ください。
◎妙見 縁日:毎月一日、十五日
特に、1月1日の初詣を「初妙見」として重んじています。
妙見菩薩は、北辰尊星王ともいい、北辰(北極星)を神格化した菩薩様です。
五穀豊穣・天下泰平・病気平癒・商売繁盛・交通安全・学業成就・縁結び等々、広きに渡り願いをお聞きくださいます。
妙見菩薩は、主に日蓮宗で祀られています。
◎水天 縁日:毎月五日
※地域によっては、一日・五日・十五日と行うところもあります。
水天は、水を司る竜神です。
水難除けや、安産のご利益があると言われます。
◎薬師 縁日:毎月八日
薬師如来は、医薬の仏として信仰を集めています。
1月8日の縁日は、「初薬師」と呼ばれ賑わいます。
◎鬼子母 縁日:毎月八日・十八日・二十八日
鬼子母神は、子授け・安産・子育の神様です。
※鬼子母は「きしぼ」とも読まれます。
◎金毘羅 縁日:毎月十日
※金毘羅は、金比羅とも書かれます。
金比羅は、海上の守護神です。
1月10日を「初金毘羅」もしくは「初十日」と呼びます。
◎虚空蔵 縁日:毎月十三日
虚空蔵菩薩は、特に知恵の仏様として信仰を集めています。
数え年13歳の男女が、福徳や知恵を授かるために参詣する十三参りでも知られている仏様です。
◎閻魔 縁日:毎月十六日
1月16日は「初閻魔」で、多くの参詣者でにぎわいます。
閻魔大王は恐ろしいイメージがありますが、地蔵菩薩の化身とされています。
◎観音 縁日:毎月十八日
1月18日が、「初観音」となります。
1日の参詣が千日分の功徳に当たるとされる千日詣(千日参り)にも、たくさんの参詣者が訪れます。
また観世音菩薩は、とても慈悲深い菩薩様です。
救いを求める人に応じて姿を変える観音を「変化観音」、そのままの姿の観音を「聖観音」と呼びます。
◎大師 縁日:毎月二十一日
縁日の日にちは弘法大師の忌日に由来し、真言宗の縁日となっています。
弘法大師は、真言宗の開祖である「空海」です。
1月21日は「初大師」、3月21日は「御影供」(真言宗)、12月21日は「終弘法」と呼ばれています。
◎地蔵 縁日:毎月二十四日
1月24日は「初地蔵」とされ、賑わいを見せます。
ところで、地蔵の十福はご存じですか?
古くから地蔵菩薩を信仰すると、10種類の徳福(女人泰産・身根具足・除衆病疾・寿命長遠・聡明智慧・財宝盈溢・衆人愛敬・穀米成熟・神明加護・証大菩提)が得られるとされています。
◎愛宕 縁日:毎月二十四日
「初愛宕」は、1月24日です。
旧暦6月24日は千日詣となり、この日に参詣すると千日分の功徳が得られるとされています。
◎天神 縁日:毎月二十五日
25日の日は、菅原道真の命日に由来しています。
1月25日は「初天神」、12月25日は「終い天神」です。
学問の神様として有名な菅原道真ですが、元々は火雷天神として祀られていました。
◎不動 縁日:毎月二十八日
※地域によって、毎月一日・十五日・二十八日とするところもあります。
「初不動」は1月28日、その日に焚く護摩を「初護摩」といいます。
日にちを明確にしていない神仏と縁日
◎毘沙門天 縁日:一月・五月・九月の第一寅の日
1月の縁日を「初寅」といい、特に重んじます。
毘沙門天は多聞天とも呼ばれ、七福神の一つとしても良く知られています。
◎摩利支天 縁日:その月の亥の日
1月最初の亥の日は「初亥」といわれ、賑わいます。
摩利支天は、日光(陽炎)を神格化したものです。
武勇の神様として、祀られています。
◎大黒天 縁日:甲子の日
大黒天の縁日は年に6回ありますが、一月と十一月の縁日が重んじられています。
よくご存じかとは思いますが、大黒天は福徳や財宝を与える神様です。
1月の縁日を、「初大黒」「初甲子」と呼んでいます。
◎弁財天 縁日:己巳の日
弁財天は、福徳・知恵・財宝賦与の神様です。
1月最初の巳の日を、「初巳」もしくは「初弁天」と呼び重んじられています。
縁日と祭りの違いは?
縁日は、先にも書いた通り「特定の神仏に縁のある日」で、その日に祭祀や供養が行われます。
そして、祭りを一言でいうと「寺社において行われる祭祀」です。
どちらも祭祀が執り行われますし、参道には露店が立ち並びますから、その違いを気に留める事はそう多く無いかもしれません。
ただ、祭りの根底に流れているのは、農作物の豊作祈願や収穫祝いですし、神仏だけではなくご先祖様にも感謝の意を表す日ともされています。
最後に・・・
ほとんどの縁日には、露店や屋台が立ち並び賑わいます。
冒頭で、縁日という言葉を聞いた時にイメージするのは屋台や露店で賑わう光景かもしれないと書きました。
なぜだろう?と、この記事を書きながら考えていたのですが、結論には至りませんでした。
ただ一つ、「縁日になると屋台や露店が出るから行ってみよう」というような、縁日本来の行いとは別の目的が、時代の流れの中で生まれたからなのかもしれないと感じているところです。
《参考》
現代こよみ読み解き事典 / 岡田芳朗 阿久根末忠 編著
如来・菩薩にはどんな尊格がある?釈迦如来や観音菩薩の役割を知ろう / いい仏壇
星の仏様 妙見菩薩 / 奈良 斑鳩 法輪寺
鬼子母神 / WEB版新纂浄土宗大辞典
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