日本には報恩講や伊勢講、恵比寿講など、「○○講」と呼ばれる行事が数あります。
これらは仏教や神様に絡んだ行事になりますが、講はそれが全てではありません。
そこで講の意味や種類、その移り変わりについて、解り易くまとめてみました。
講の意味とは?
講という文字を、単純に辞書で調べてみると
- (カウ)講じること 講義
- (コウ)
経典の講義をする会
仏教の信者が集まり、仏の徳を賛美する法会
※法会:経典を読誦 し、講説する催し。または、死者の追善供養を営む行事。 - 神社・仏閣への参詣や奉加、寄進などをする目的で作られた信者の団体
- 貯蓄やお金の融通の為に組織した、相互付与の団体
- ある娯楽をしたり親睦の為に、同行者が集まった寄合
といった意味があります。
※カッコ内の読みは、旧仮名遣いです。
冒頭でもあげた伊勢講や恵比寿講は、「3」に属する講だということが出来ます。
「4」は、もし町内会で困っている人がいたら、みんなで助けるというイメージ、「5」は簡単に言うならサークルや愛好会に当たるものと思っていただけると解り易いでしょう。
じゃぁ・・・「2」は?となっていませんか?
前者は現在も行われてる寺院があるのかもしれませんが、把握できておらず申し訳のないところです。
なお後者に対応する行事は、忌日法要や年忌法要になります。
講の歴史
歴史といっては大げさかもしれませんが、様々な講が出来た流れを、まとめてみました。
講の始まりはいつ?
講は、法会を起源としているとされており、日本に仏教が伝わった頃からあったものです。
古代日本では、宮廷内において初めての法会を執り行ったのが、7世紀半ばと言われています。
一つの例として法華経を見てみると、8世紀半ばには、東大寺において初めての「法華会」が開かれ、奈良時代末期~平安時代初期には「法華八講」が行われるようになりました。
時代の流れと共に、国家や社会の安穏を祈る正格が強い「法華会」から、死者の追善供養を主な目的とする「法華八講」へと変化していったのです。
また法華八講の広がりは、他の法会にも影響を及ぼし「阿弥陀講・薬師講・地蔵講」など「○○講」と称する様々な法会が行われるようになりました。
様々な講の出現
元は仏教から生まれた講ですが、古い時代は神仏習合であったこともあり、講は神道にも広がりをみせ、氏神講や熊野講など神社や祭神の名称を用いた講が出来ていきました。
その後、神社と深く結びついていた民間信仰が導線となり、生活の安寧や農産漁業の安全及び成果などを目的とする講が生まれました。
※安寧:無事でやすらかなこと。特に、世の中が穏やかで安定していること。(goo辞書より)
中世(平安時代末期~戦国時代)には、元々あった信仰的な講に加え、相互扶助的な役割を持った講が出来てきたことで、村落を中心とした地域社会に広がっていきます。
そして近世(安土桃山時代~大政奉還まで)になると、村落だけではなく都市部にも講が出現します。
題目講や念仏講、伊勢講などは、この頃に出来た講です。
※安土桃山時代は、中世に含める論もありますが、ここでは一般的に多く用いられている近世に含めました。
講の減少
明治時代以降においての講は、減少傾向にあります。
主な要因は、明治政府による講の規制と、戦後の経済成長期において講を支えてきた社会背景の変容によるものです。
講には、どんな種類があるの?
法華八講が生まれた後、多くの講が活動していた江戸時代を経て、減少したとはいえ現在も講は存在しています。
過去のものを含む形にはなりますが、講の種類(大きな区分)ごとに主な講をあげてみました。
宗教的な講
宗教との関りが中心となり活動している講で、
- 講員が生活する地域内の宗教的な施設や活動を対象とするもの
田の神講、恵比寿講、八幡候、熊野講、薬師講、地蔵講など - 講員が生活する地域外の宗教的な施設や活動を対象とするもの
参詣講
といった、2つの種類があります。
経済的な講
講の目的や活動が、経済とのつながりを持っているものです。
講員の間で金融や物資を融通する頼母子講や無尽講、互いに労働力を提供し合うユイやモヤイがあります。
社会的な講
講の活動や目的が、社会との関りを中心としているものとなります。
- 地域社会の組織単位を更生している契約講
- 社会階層に対して作られる地主講や小作講
- 娯楽や親睦をはかる事を主な目的とする寄合講や遊山講
などです。
最後に・・・
「講」という言葉を知ったのは、そう遠くないところです。
ただ、それより先に地域住民どうしが金銭的に支え合う仕組みが現存しているという事を知っていたことが、この記事を書くきっかけになりました。
追々にはなりますが、3つに分類している講について、もう少し詳しい部分をお伝え出来れば…と思っているところです。
《参考》
人のつながりの歴史・民族・宗教 -「講」の文化論- / 長谷部八朗監修 講研究会編集委員会編
講とは / コトバンク
コメント