あちらこちらで桜の花が咲き始め、なんとなくわくわくした気持ちになる春!
桜の咲くのが待ち遠しくて、随分前からお花見の予定を立てたり、名所といわれる場所へ桜まつりを見に行く計画を立てる方も多いのではないでしょうか。
春はやっぱり桜なのかなぁとは思いますが、桜まつりならぬ花まつりという行事があることはご存知ですか?
えっ?花まつりっていうくらいだから、花=桜なんじゃない?なんて思うかもしれませんが違っています。
花まつりは、お釈迦様にまつわる仏教行事のひとつです。
お盆やお彼岸といった、ご先祖様を弔う行事はご家庭の年間行事に組み込まれているほど浸透していますが、もしかしたら、花まつりは知らない方が多いのではないでしょうか。
花まつりに行く行かないは別にしても、こういう行事があるということを知って欲しいという思いから、花まつりについて書きました。
花まつりとは?
花まつりは、お釈迦様の誕生日を祝う行事です。
実のところ、花まつりという呼び方は通称とでもいいましょうか、第二次世界大戦後に広まったものになります。
本来は、灌仏会、仏生会、降誕会、竜華会などと呼ばれているものです。
本来の名前にとって代わって、花まつりという名前が生まれたのはなぜなのでしょう。
花まつり!名前の由来は?
花まつりという名前が生まれた由来には、
- 花御堂にたくさんの花が飾られるから
- 一般的に4月8日と、ちょうど桜の時期に行われるから
- ドイツ留学中の日本人が、ベルリンで開いたブルーメンフェストから来ている
※花まつりは、ブルーメンフェスト(ドイツ語)を訳したもの
など、諸説あります。
中でも多く伝えられているのは、花御堂にたくさんの花を飾ることからというものですが、そこにはお釈迦様の生まれた場所が関わっています。
さかのぼる事、約2500年前・・・
お釈迦様は、母親が里帰りの途中、休憩に立ち寄ったネパール国ルンビニの花園で誕生しました。
この事から、花まつりでは花御堂を造りたくさんの花で飾ることで、そこをルンビニの花園に見立てて、お釈迦様の誕生日を祝っているのです。
花まつりってどんな祭りなの?
ところで、花まつりではどんな行事が行われていると思いますか?
開催される寺院によって若干の違いがあるかもしれませんが、おおよそは以下の通りです。
花まつりが開催される寺院には、花御堂が設けられ、たくさんの花で飾り付けられます。
花御堂の中には、右手で天を指し左手で地を指しているお釈迦様の誕生仏が安置されており、参拝者はお釈迦様の誕生仏に、竹の柄杓で甘茶を灌ぐことで誕生日を祝います。
この他に、白い像に花御堂を乗せて練り歩く稚児行列を行うところもあります。
あら?ひょっとして、拍子抜けしているとか・・・www
お釈迦様の誕生祝いということで、もっと形式ばった仰々しいものを想像されていたのかもしれませんが、花まつりは、老若男女を問わず、どなたでも参加することができる行事です。
寺院によっては、さまざまなイベントを行うところもあり、地域の人々と一緒にお釈迦様の誕生日を祝っています。
花まつり!甘茶を灌ぐのはなぜ?白い像の由来は?
さて、ここまで読んでいただいたあなたにお伺いします!
お釈迦様の誕生仏は左右の指でそれぞれ天地をさしていたり、灌ぐのは水ではなく甘茶だったり、稚児行列には白い像が登場するって、不思議ではありませんか?
これらは全て、お釈迦様の誕生にまつわる伝説が基になっています。
その昔、ヒマラヤ山脈の麓にシャーキャ族(釈迦族)という小さな部族があり、王はシュッドーダナー王(浄飯王・じょうぼんおう)、王妃はマーヤー夫人(摩耶夫人・まやぶにん)といいました。
この二人が、お釈迦様の父親と母親です。
二人の間には、なかなかお世継ぎができず、王は心を痛めておられました。
ある日、マーヤー夫人が宮殿で横になっていると、天上から六牙の白象が降りてきて右脇より胎内に入っていく夢を見ます。
目覚めた時、大いなる命を授かったに違いないと、ご懐妊を悟られたそうです。
また、夢の話を聞いた国中の人々は、「白い象とはめでたい事だ。きっと王子様が生まれるお告げに違いない。」と喜びました。
※象は、古くから神聖な生き物とされています。白もまた、どんなものにも染まっていない最も神聖な物を指す色です。
夢は夢で終わることはなく、マーヤー夫人のお腹には、本当に子供が宿りました。
春になり、あたり一面に花が咲く頃、マーヤー夫人は出産のために里帰りの旅路に付きます。
その途中、ルンビニの花園で休憩を取りました。
池のほとりを散歩していたマーヤー夫人が、真っ赤な花を咲き誇らせたアソーカの樹(無憂樹・むゆうじゅ)の一枝を折ろうとして手を伸ばした時、脇の下から一人の男の子が産まれました。
王子の誕生です。
王子は、生まれるとすぐ東に向かって七歩あゆむと、右手で天を左手で地を指して「天下天上、唯我独尊」と宣言したのです。
※天上天下、唯我独尊:この世に自分という存在は代わりがなく、自分一人しかいないから尊いという意味ですが、その解釈はさまざまあります。
それだけではありません。
誕生の瞬間、天から9匹の竜が現れて甘露の雨を降らせ、神々は天のかさをかざし曼陀羅華を降らせたと言われています。
※曼陀羅華:仏が現われたり説法したりする時などに、天から降りてくる美しく香りも良い、見る人の心を楽しませるという花
この時に降りそそいだ甘露の雨は、王子の産湯となりました。
もう、お解りですね。
- 誕生仏の姿=お釈迦様が生まれてすぐに「天下天上、唯我独尊」と宣言したときの姿
- 甘茶=産湯となった甘露
ということです。
ここでもうひとつ!あれ?と思う事がありませんか?!
白い像がたりないぞ・・・と・・・。
マーヤー夫人が夢の中でみた白い像、実はお釈迦様が姿を変えたものだったのです。
これは、お釈迦様の生涯における八つの重要な出来事「釈迦八相」から解ります。
八相は、
- 降兜率(ごうとそつ)
- 托胎(たくたい)
- 出胎(しゅったい)
- 出家(しゅっけ)
- 降魔(ごうま)
- 成道(じょうどう)
- 転法輪(てんほうりん)
- 入滅(にゅうめつ)
という八つの出来事をいいます。
最初のできごとになる「降兜率」そして「托胎」が、マーヤー夫人の見た夢にあたる部分です。
降兜率とは?
降兜率の「兜率」は兜率天を意味します。つまり、兜率天から降りて来たということです。
兜率天は、将来仏様となるべき菩薩様が住み、修行をしているところになります。
お釈迦様もまた、菩薩として兜率天で修業をしていました。
現世(こちらの世界)に降りてこられる時に、六つの牙を持つ白い像に姿を変えたと言われています。
※白い象に乗って降りて来たという解釈もあります。
托胎とは?
托と胎、それぞれの漢字には、
- 托:身を寄せる
- 胎:子が母親の体内にやどる
といった意味があります。
托胎とは、六牙の白象に姿を変えたお釈迦様が、マーヤー夫人の右脇から入って胎内に宿ったことを指しています。
これで、花まつりにおいて白象が登場する理由もご理解いただけたのではないでしょうか。
おや?まだ、何か物足りない事がありますか?
実のところ、もう少し・・・と思うところが無い事もありません。
ただ、長くなりすぎるのもどうかと思いますので、もし、
白い像に六つの牙があるのはなぜ?という疑問があるのであればこちらを、
⇒ 「花まつりの物語~六牙の白象(ろくげのびゃくぞう)」
釈迦八相をすべて知りたい方は、こちらをご覧いただければと思います。
⇒ 「釈迦八相」
花まつり!2024年はいつ?
花まつりは、一般的に4月8日に開催されていますが、旧暦4月8日や5月8日(月遅れ)で開催する寺院もあります。
地域による違いもあって、関東地方では4月8日、関西地方では5月8日に開催される事が多いようです。
参考までに、2024年のカレンダーを見てみると
となっています。
ただ、寺院によっては、必ずこの日に当てはまるということもありませんm(_ _)m
もし、ここで花まつりがあったら・・・と、ご希望の寺院があるとしたら、お手数をおかけいたしますが、HPで確認するか直接問い合わせていただ方が確実です。
また、一部寺院にはなりますが、全日本仏教協会HPにおいて花まつりやそれに伴うイベントの日程を公開していますので、よろしければご覧ください。
⇒ 「花まつり・春のイベント」
※(2024.2.13現在)昨年情報となっておりますが、今後、随時更新されます。
2024年花まつりを開催する寺院を調べてみました
上記HPが、今年の情報に更新されていなかったので、自力で調べました。
少ないですが、解ったところの寺社と開催日等を列記いたします。
◎川崎大師
川崎大師では、花まつり週間という期間を設けて、お釈迦様の誕生日をお祝いしています。
開催日:4月1日(月)~8日(月)
詳細 ⇒「川崎大師 4月の行事」
◎築地本願寺
開催日時:4月7日(日)10:00~16:00
日程やイベントの詳細はHPでご確認ください。
⇒「はなまつり開催のお知らせ」
◎総本山 善通寺
開催日:4月8日(月)午後1時より釈迦堂にて「仏生会(花まつり)」
◎萬年山 青松寺
開催日:4月6日(土)
法要のあと、和太鼓の公園や縁日が開催されます。
⇒「花まつり」
◎知恩院
開催日:4月8日(月)御影堂にて
⇒「花まつり(灌仏会)」
京都と奈良の開催寺院は、こちらのブログが詳しかったので、ご紹介いたします。
⇒「京都と奈良で、花祭りの参拝ができるお寺 (2023年版)」
※2024.2.13現在、2023年情報となっている事をこの場にて申し添えます。更新がありましたら、この文言を削除いたします。
最後に・・・
寺院は、お彼岸や法事など、ご先祖様を弔う時だけ足を運ぶ程度になってはいませんか?
花まつりは、仏教行事ではありますが、形式ばった堅苦しいものではありませんので、ご家族でお釈迦様の誕生日を祝いに足を運んでみてはいかがでしょうか。
また、稚児行列を行う寺院では、行列に参加していただくお子様を募集しているところもあります。
参加したお子様には幼少期の思い出として残るでしょうし、親御さんにとっても一つの記念となるのではと感じているところです。
《参考》
花まつり / やさしい仏教入門
お釈迦様のご生涯 / 法華宗 真門流
お釈迦様の誕生日「花まつり」はドイツ発祥? / HUFFPOST
花まつりの物語~六牙の白象(ろくげのびゃくぞう) / 不変山永寿院
釈迦八相(平成19年8月号) / 瑞圭 浄国寺
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