突然ですが・・・
「法要」という言葉から、思い浮かべる行事は何ですか?
きっと、ほとんどの方が、先に亡くなられたご家族やご親戚の方の「忌日法要(きにちほうよう・きじつほうよう)」や「年忌法要」を考えたのではないでしょうか。
※忌日法要は初七日~百か日までの法要を、年忌法要は1周忌を含むそれ以降の法要を指す言葉です。
では、改めて伺いしますが「報恩講」はご存知ですか?
ん???それって何?と思われても、なんら不思議なことではありません。
同じ仏教徒であっても、宗派によっての違いがあります。
報恩講は、浄土真宗で執り行われている法要の仏事ですから、宗派が違えばご存じ無いのは当然の事です。
ただ、浄土真宗の門徒であってもご存じの無い方がいらっしゃるかもしれません。
恥ずかしながら、筆者もその一人でした(汗;
そんなことから、今回は報恩講についてまとめてみました。
もし、宗派や信徒が違うから興味が無いという場合はスルーしていただいても構いません。
報恩講とは?
報恩講は、各地の浄土真宗寺院において親鸞聖人の祥月命日の前後に執り行われる法要で、年間行事の中では最も重要とされています。
※祥月命日とは、故人が亡くなった月日と同じ月日を指して呼ぶものです。
どんな法要なのか?というと・・・
浄土真宗の宗祖である親鸞聖人はもとより、阿弥陀如来の一切を救うという大慈悲と、私達の御先達による大慈悲への導きに報恩謝徳するもので、全ての僧侶や門徒が本山へ参拝することが慣わしとなっています。
報恩講の起源は?
報恩講の起源は、親鸞証人33回忌の永仁2(1294)年に、覚如上人(本願寺第3代宗)が「報恩講私記」を著わしたことによるとされており、その翌年に表した「御伝鈔」には、
その後、大谷墓所を掘り返して、大谷の西、吉水の北に仏閣を建てて影像を安置したところ、諸国の門弟が親鸞の教えを受けたことへの報謝を抽ん出ようとし、年々廟堂に参詣するようになった。
と、報恩講だけではなく大谷廟堂の起源と思われる文章が記されています。
※報恩講私記は、報恩講式とも言われます。
報恩講・報恩謝徳はどんな意味を持つの?
ここで、報恩講という仏事自体からは少し離れますが、普段聞き慣れない「報恩講」や「報恩謝徳」という言葉の意味を見て行きたいと思います。
まず、双方に通じる「報恩」ですが、こちらは読んで字のごとく「恩に報いる」という意味です。
次に、「講」の意味を見てみると
- 講じること-講義
- 経典を講じる法会
- 民族宗教における宗教行事を行う結社のこと-またその行事や会合のこと
- 貯蓄やお金の融通のために組織した相互扶助の団体
という具合に、かなり広範囲な意味を持っていますが、本来は「仏教の講話を聞くために集まる人々の集会」を意味しました。
最後に残った「謝徳」は、受けた恩に対する感謝の気持ちを言い、「報恩謝徳」で「恩に報い徳に謝す」という意味になります。
「報恩謝徳」は、こちらの記事が解りやすく説明してくれていますので、良かったらご覧になってみてください。
⇒「報恩謝徳」
報恩講はいつ行われるの?
それでは、話を報恩講に戻します。
報恩講は、浄土真宗各寺院において1週間ほどの期間を設けて執り行われるのですが、全ての寺院が同じ日程で行っているものではありません。
大まかには、毎年10月から翌年1月までの間になります。
って・・・これではあんまりですよね ^ ^;
でも、どうして寺院によって日程が違っているのでしょうか。
報恩講の日程が寺院によって違うのはなぜ?
報恩講の日程が各寺社によって違う事に大きく関係しているのは、日本の暦です。
あぁ~!と、ここで何か閃いたとしたら、きっと当たっていると思います。
旧暦の頃から行われていて、現在まで伝わっている行事の日程は、
- 旧暦の日付をそのまま新暦で行う
- 旧暦を新暦に置き換えて行う
- 月遅れ(旧暦の月日を1ヶ月遅らせた新暦)で行う
という3つのパターンがほとんどです。
報恩講も、類に漏れず・・・というわけです。
報恩講は、元々親鸞聖人の命日である旧暦11月28日に行われていましたが、新暦の採用に伴って一部宗派では、旧暦を新暦に換算した1月16日に行うようになりました。
加えて、本山の報恩講にはすべての僧侶や門徒が参拝するという慣わしがあるため、他の寺院が日程をずらしているという事も絡んでいます。
宗派で違う報恩講の日程!
報恩講の日程は、浄土真宗の宗派によって違います。
- 10月25日~28日:真宗浄興寺派
- 11月21日~28日:真宗大谷派(お東)・真宗佛光寺派・真宗興正派・真宗木辺派・真宗出雲路派・真宗誠照寺派・真宗三門徒派・真宗山元派
- 11月23日~28日:浄土真宗東本願寺派
- 1月9日~16日:浄土真宗本願寺派(お西)・真宗高田派
なお、本山のように規模の大きな寺院では7日~8日の法要期間がありますが、末寺になると1日~3日間の法要としているところもあり、10月中旬~11月下旬頃に多く勤められているようです。
初めての報恩講!服装や持ち物は?お布施はいくら?
ところで、初めて報恩講に参加するとなった時、お布施や服装はどうしたらいいのか気になりませんか?
もう少し細かいところになると、お布施の金額やのし袋の表書き、水引の色も決まりがあったらどうしよう?と悩む方がいらっしゃるかと思います。
そのあたりをまとめましたので、どうぞ参考にされてください。
報恩講 お布施の相場は?
もしかしたら、ここが一番の悩みどころかもしれません。
それなのに、はっきりとした金額をお伝えできないというもどかしい状況になっています。
えぇーーーーーっ!!
という、避難の声が上がりそうですが、報恩講のお布施には地域差があり、3,000円~1万円と幅もあります。
無難なところを取るとすれば、5,000円でしょうか。
ちなみに、関東圏では5,000円が多いそうです。
もし、どうしても気になるようでしたら、門徒総代さんに聞いてみるのが一番かと思います。
報恩講 のし袋の表書きと水引の色は?
報恩講のお布施を入れるのし袋の水引は、一般的に紅白の鮑結びですが、白い封筒でも差支えはありません。
表書きは、「報恩講御布施」または「報恩講懇志」とします。
※「お布施」や「お供え」としても、失礼には当たりません。
もし、寺院からお布施用の封筒を渡された場合は、そのまま使っていただいて大丈夫です。
報恩講 服装や持ち物は?
報恩講へ出向く時の服装には、特にルールもなく平服でかまいません。
とはいえ、派手過ぎる服装は慎んだ方が無難です。
このあたりは、報恩講という法要に参加するという意識があれば、常識の範囲内でご対応いただけるのではないかと思います。
また、門徒の正装として、本願寺派は「門徒式章」大谷派では「略肩衣」を肩からかけます。
続いて持ち物ですが、念数珠と聖典をお持ちください。
聖典をお持ちでない場合は、寺院で借りることも出来ますし、中には配布してくださる寺院もありますので、ご安心頂ければと思います。
最後に・・・
最後になりますが、お布施について少し触れておきたいと思います。
「お布施=僧侶さんへの報酬」
こんな風に思われているかもしれませんが、浄土真宗でのお布施は、阿弥陀如来様への感謝の気持ちを表すもので、財施として行うというのが本来の考え方です。
ただ、報恩講に限らずとも、こういう時にこれだけ包んでくださいと決められていることもあります。
きっと、なんで?と疑問を持つ方もいらっしゃるのではないでしょうか。
その理由は、寺院を維持するために必要な費用を門徒のみなさんで出し合うという仕組みになっているからです。
《参考》
報恩講って結局いつ?お寺によって法要の日程が異なるわけ ~浄土真宗本願寺派~ / まいてら新聞
報恩講(ほうおんこう)とは? / 株式会社滝本仏光堂
本願寺報恩講確立と蓮如の宗教活動 ー文明12年報恩講の歴史的意義ー
報恩謝徳 / 四字熟語図書館
報恩講は祝儀?不祝儀? / 仏教ちょっと教えて POSTEIOS研究会
【解説】報恩講ってなに。浄土真宗で一番大切な行事だよ / 円龍寺かっけいブログ
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