新緑の季節が過ぎ、なんとなぁ~く夏の気配は感じるものの、そろそろ梅雨だよね・・・ と思う頃、二十四節気では「芒種」を迎えます。
と言ったところで、「芒種」そのものがあまり馴染みのない言葉だと思います。
本格的な梅雨を迎える前に訪れる「芒種」の季節について、その時期はもちろんのこと、芒種の持つ意味や七十二候の表す季節についてまとめました。
芒種の意味とは?
こよみ便覧にある芒種の記述を見ると、
「芒ある穀るい稼種する時なればなり」
とあります。
他の節気でもある事ですが、このままでは意味が解りませんwww
その理由は、「芒」も「稼種」も、現代では馴染みのない言葉だからです。
ということなので、ひとつずつ見ていきましょう^ ^
「芒」とは、米や麦などイネ科の植物が実った時、その果実の先端にある針状の突起の事です。
解り易いので、麦の写真をご覧ください。
ひとつひとつの実の先端から、針のように細く伸びているものが見て取れるかと思います。
これが「芒」です。
暦便覧では「のげ」と読ませていますが、通常は「のぎ」や「ぼう」と読みます。
次に「稼種」はというと、????? m(_ _)m
どうやら、この二文字を、1つの単語として見てはいけないようです。
「種」は、タネだとしても、タネが稼ぐというのはおかしな話ですよね?!
「稼」という文字を見てぱっと思い浮かぶのは、仕事をする(稼ぐ)や、働いて得た金銭(稼ぎ)かな?!と思います。
でも、それだけではありません。
「稼」には、
- うえる(植)(穀物を育てるために、種子や苗を地中に埋める)
- うえつけ(穀物を育てる為に、種子や苗を地中に埋める事)
- 耕作(田畑を耕して穀物・野菜などを栽培すること)、農業の仕事
- 実り( 草木や穀物などが実を結ぶこと)、実った稲の穂
という、まったく別の意味もあります。※漢字辞典-OK辞典より
これらの事をこよみ便覧の記述に当てはめると、芒種は芒のある穀物の種まきをする時期ということになります。
また、お米の場合は稲を植えるので、田植の時期という解釈も成り立ちます。
芒種はいつなの?
芒種は毎年6月6日頃、もしくは芒種から次の節気である夏至までの期間を指します。
現在、暦要項で公表されている芒種の日(期間)は、
- 2024年が、6月5日(6月5日~20日)
- 2025年も、6月5日(6月5日~20日)
と、なっています。
現在は、6月にはすでに田植が終わっていますから、実際の季節にそぐわないと感じるかもしれません。
でも、昔は稲の苗を水苗代といって水田で育てていたため今よりも生育が遅く、田植えは6月に入ってから行うものだったという事を申し添えます。
芒種はどんな季節なの?
ここからは、芒種の季節を、七十二候の言葉を基に見ていこうと思います。
1つの節気を、初候、次候、末候(おおよそ5日ずつ)の3つに分けて、気象や動植物の変化を表したものです。
芒種 初候 蟷螂生
「蟷螂生(かまきりしょうず)」
蟷螂が生まれ出る季節を、表しています。
カマキリの産卵は秋に行われるもので、泡状の粘液と共に植物の茎などに卵を産み付けます。
その粘液は、卵を外敵や気温の変化から守る役割をしており、中には数百個の卵が入っているそうです。
無事に冬を越した卵から、孵化した赤ちゃんが一斉に外の世界に飛び出す季節となります。
雪国では、カマキリの卵の位置で、その年の積雪を予想することがあります。
これは、カマキリが雪に隠れない位置に、卵を産む習性があるからです。
民間予報と言われれば、それまでなのですが・・・。
カマキリの卵が、高い位置にある年は雪が多く、低い位置にある年は雪が少ない、というふうに考えられています。
芒種 次候 腐草為蛍
「腐草為蛍(くされたるくさほたるとなる)」
※腐草は「ふそう」とも読まれます。
腐った草が蒸れ、蛍となる時期を表しています。
このまま素直に解釈すると、なんだかおかしな話だと思いませんか?
だって、どう考えても、腐った草が蛍になるはずがありませんもの^ ^;
蛍の幼虫は、田んぼや水辺などの湿地に生息しています。
きっと、この事が腐った草が蛍になると言われた要因だと考えることができます。
なぜかというと・・・
湿地に生えている草は、水に浸っている所がブヨブヨになっていたりします。
腐った草というよりは、腐りかけた草の方が合っているかもしれません。
そんな草の下で、蛹から成虫になった蛍が、幻想的な光を放ち始めるからです。
また、この頃は梅雨が近づいていることもあり、ジメジメとした蒸し暑い日も多くなってきます。
これらの事から、
「蒸し暑くなり、腐れかけた草の下で蛍が光を放ち始める」
こんな解釈が、合っているように感じます。
※あくまで筆者の解釈です。
芒種 末候 梅子黄
「梅子黄(うめのみきなり)」
※「うめのみきばむ」とも読まれています。
梅の実が熟し、黄色に色づく季節を表しています。
梅は、古くから日本人の身近にある植物でした。
お花見といえば「桜」を連想すると思いますが、奈良時代以前は梅の花を愛でるものでもありました。
そして!
梅干しを漬けるには、この時期の梅が最適です^ ^
梅干しには、殺菌効果や疲労回復、血液浄化作用など、様々な効果があります。
今でこそ、その効果は科学的に解明されていますが、昔から「梅は三毒を断つ」と言われ、日本人の健康を支えてきました。
三毒は、
- 食べ物の毒:食べ物に付着するバクテリアなど
- 血液の毒:疲労の元になる乳酸など
- 水の毒:水に含まれる雑菌や病原菌
を、指しています。
「食べ物の毒」と聞いて、もしかしたら・・・と、思い当たる節があるのではないでしょうか。
そう!日の丸弁当です!!
ご飯の真ん中にある梅干しは、ご飯が悪くなるのを防ぐためにと入れられていました。
おにぎりの具として、梅干しを使ったのも同じ理由からです。
それだけではありません!梅干しには、
- 焼いた梅干(梅肉)を、こめかみに貼ると頭痛が治る
- 白湯(さゆ)に、梅干しを入れて飲むと風邪に効く
- 梅干し入りのお茶で、うがいをすると風邪を引かない
という言い伝えも残っています。
最後に・・・
梅雨は、本来「ばいう」と読み、梅の実が熟す頃に降る雨を指しています。
日本独自の言葉のように思うところですが、これもまた中国から伝わってきたものです。
梅雨を「つゆ」と読むようになったのは、江戸時代頃からと言われています。
≪参考≫
旧暦で楽しむ日本の四季 二十四節気と七十二候 / 別冊宝島編集部編
現代こよみ読み解き事典 / 岡田芳朗+阿久根末忠編著
七十二候 第二十五候 「蟷螂生ず」 / 季節を感じる日本の習わし
腐草為蛍・くされたるくさほたるとなる / ぴお 町の工務店ネット
七十二候『梅子黄(うめのみきばむ)』。熟した梅が癒すのは・・・/ tenki.jp 日本気象協会/ALiNKインターネット
田植えの変遷 / 秋田市
コメント
>これは旧暦を新暦に変換した時に生じるズレで、旧暦での芒種は、おおよそ4月末~5月初旬に訪れていました。
これは、新暦の6月頃が旧暦の4月~5月、と言ってるのと同意であれば、田植えの時期はやはり新暦では6月となり、疑問は解けないのでは?
昔は今よりも遅い時期に蒔いた、と考えれば納得がいきます。今は品種改良などで寒くても蒔けるようになったのでは。
梅雨を五月雨と呼ぶのもその道理であり、旧暦の月は1ヶ月くらい遅れるが、季節はそう外していないのではないかと思います。
のーちゃんさん
始めまして。
ご意見ありがとうございました。
考慮の上、記事の一部を修正させていただきました。
今後とも、よろしくお願いいたします。