その昔、こよみと実際の季節は一致していませんでした。
この不具合を解消するために考え出されたのが、二十四節気です。
発祥の地は中国ですが、554(元嘉22)年に百済を通じて日本に伝わりました。
二十四節気の由来は、こちらの記事に詳しく書いていますので、ご興味あればご覧ください。
さて、今回は二十四節気中15番目の節気に当たる白露を取り上げたいと思います。
白い露と書いて「はくろ」と読みますが、文字を見るだけで、どことなく寒さを感じるのは気のせいでしょうか。
この記事では、こよみ便覧にある白露の記載や七十二候の言葉を基に、
- 白露の持つ意味
- 白露の季節
- 白露の日と期間
について、お届けいたします。
二十四節気 白露の意味とは?
さっそく、この時期をどうして白露と呼んだのか?白露の持つ意味から見ていきましょう。
二十四節気を解説する時に良く用いられるのが、江戸時代(1787年=天明7年)に出版されたこよみ便覧です。
類に漏れずではありますが、こよみ便覧の記載を用いて、白露の意味を紐解いていきたいと思います。
「陰気やうやくかさなりて 露こごりて白色となれバなり」
こよみ便覧において、白露の欄にはこのように書かれています。
※旧仮名遣いなどもありますが、出来るだけ忠実に書きました。
実際の記載は、こちらからご確認いただくことが出来ます。⇒ 「こよみ便覧」(コマ番号は「7」です。)
このままでは解りにくいと思いますので、現代の漢字仮名使いで書き直すと「陰気ようやく重なりて 露こごりて白色となれば也」となります。
随分、解り易くなったかと思いますが、まだ気になる言葉がありませんか?
例えば、陰気とか・・・
ここでの「陰気」は、陰の気を指しています。
白露という節気を解説しての陰気ですから、言うまでもなく季節に関わる陰の気です。
ちなみに陰陽説においては、季節であれば秋と冬、温度(冷たい熱い)であれば冷が陰の気を持っているとされています。
そして「こごりて」は、漢字で書くと「凝りて」となりますので「凝る」を調べたところ「液状のものが冷えたり凍ったりして凝固する」という意味があることが解りました。
それでは言葉の意味が解ったところで、こよみ便覧の記載を見直してみましょう。
ようやく重なった陰の気は、白露の後に来る節気が秋分であることも含めたうえで冬ではなく秋でしょうし、露は雨などではなく、秋になると降りてくる朝露がそぐわしいと思います。
これらのことから、日中は残暑があったとしても、朝晩は冷え込むようになり、朝露も凍るまではいかなくともすぐに流れる状態でもない微妙な時期を表しているという考えにたどり着きました。
「ようやく秋らしい気候となってきて、草の上に降りた朝露が白く光っているから(白露)である」
こよみ便覧にある白露の意味は、このように訳すことができます。
ただ、これは筆者個人の解釈であって、多くは「草の葉に白い露が結ぶ」とか、「大気が冷えてきて露が結ぶころ」と説明されているということを申し添えます。
二十四節気 白露はどんな季節?
ここまで読み進めていただいたあなたであれば、なんとなぁ~くでも白露の季節がイメージできているかと思います。
せっかくなので、もう少し季節感を深めていきましょう!
1つの節気を3つ(初候・次候・末候)に分けて、より細かく季節を表した七十二候の言葉を借りてみていきたいと思います。
白露 初候 草露白
「草露白(くさのつゆしろし)」
※「くさつゆしろし」とも読まれます。
野の草に降りた露が、白く光って見える季節を表しています。
秋は実りの季節でもありますが、この頃になると稲刈りが始まります。
※地方によって早い遅いはありますが、平均的な稲刈り期は9月上旬~10月中旬となっています。
新米!楽しみですよね^ ^
他にも、なすやかぼちゃ、キノコ類といった野菜や、イチジク、ぶどう、梨、栗などの果物も旬の時期を迎えます。
海の幸であれば、あわびや鮭、さんま、鰹といったところでしょうか。
ん?!何か不思議な事がありますか?
もしや「鰹」に、違和感を覚えているとか???
鰹は、初夏と秋の年に2度旬を迎える魚で、初夏の鰹は初鰹、秋のものは戻り鰹と呼ばれています。
戻り鰹は、脂がのっているだけでなく、身も引締まっていて味は濃厚です。
美味しい食べ方は・・・やっぱり刺身が一番です♪
もし、一匹丸ごと手に入れて自宅でさばいたとしたら、その時に出たアラは「あら汁」にしてみてください。
鰹のアラは、軽く塩を振ってなじませた後に熱湯をかけると、臭みを取ることが出来ます。
白露 次候 鶺鴒鳴
「鶺鴒鳴(せきれいなく)」
鶺鴒が、鳴き始める季節を表しています。
セキレイは、もともと水辺を好んで生息している鳥なのですが、最近は住宅地でもお目にかかることができます。
白と黒のこんな鳥を、見かけたことがありませんか?
向かって左から、ハクセキレイ、セグロセキレイ、キセキレイといい、住宅地などで見かけることができるのは、ハクセキレイになります。
話は変わりますが、ちょうどこの時期、福岡市の筥崎宮において千年以上の歴史ある祭りが開催されています。
放生会と呼ばれるその祭りは、7日7夜に渡って様々な神事や行事が執り行われ、参道一帯には数百件もの露店が軒を連ねます。
この祭りは博多三大祭りの1つにも数えられており、開催期間中に延べ100万もの人が訪れるという九州随一の秋祭りです。
白露 末候 玄鳥去
「玄鳥去(つばめさる)」
春に訪れ、子育てを終えたツバメが、越冬のために南へ旅立つ季節を表しています。
白露の季節は、初候の段でも書いたように、美味しい食べ物が盛りだくさんなのですが、秋に美味しくなる野菜の代表格といえば、やっぱり「なす」ではないでしょうか。
ちょうど白露の節気中に重陽の節句を迎えますが、秋なすは行事食として取り上げられていますし、秋茄子は嫁に食わすなという諺も、多くの方がご存じではないかと思います。
焼いて良し煮ても良し!揚げても炒めても美味しくいただくことができる「なす」は、食材の万能選手といっても言い過ぎではないかもしれません。
食べ物の話はこのくらいにしておいて・・・
そろそろ、彼岸花が咲き始める頃です。
彼岸花と聞いて頭に浮かぶのは、秋のお彼岸かと思います。
秋のお彼岸は、白露末候の期間中に入りの日を迎えます。
二十四節気 白露 2024年はいつ?
白露の日は、毎年9月7日頃に訪れます。
その期間は?というと、次の節気である秋分の前日までとなります。
今年(2024年)は、白露の日が9月7日(土)、白露の期間は9月7日~9月21日です。
白露の日や期間は毎年同じ日が続く事もありますが、必ずしも同じではなく数年に一度ではありますが動きます。
ご参考までに、来年(2025年)は白露の日が9月7日、その期間は9月7日~22日で、今年と比べると期間だけが1日長くなっています。
また、白露は秋の節気のちょうど真ん中にあたることから、仲秋と呼ばれる季節でもあります。
あれ?と思った方もいらっしゃるかもしれませんが、中秋ではなく仲秋です。
もし、その違いが気になるようであれば、こちらの記事で書いていますので良かったらご覧ください。
最後に・・・
暑さ寒さも彼岸までと言われるように、白露を過ぎた頃から秋はどんどん加速します。
秋の行楽シーズンも、これからが本番です♪
秋は、どことなく寂しさを感じさせる季節でもありますが、それはさておき、皆さんそれぞれの秋を楽しんでいただけたらと思います。
《参考》
旧暦で楽しむ日本の四季 / 別冊宝島編集部編
日本の七十二候を楽しむ -旧暦のある暮らし- / 白井明大・有賀一広
お祭り 博多三大祭り 放生会 / 筥先宮
コメント