日本に古くから伝わる風習は、季節や生活にかかわるものが多いように感じますが、それだけではありません!
人の成長に関わる行事も、長く受け継がれている大切な風習です。
そう聞いて、何か思い浮かぶ行事はありましたでしょうか?
成人式や七五三のように、年齢に応じて行われる行事がこれに当たります。
おそらく、あなたの記憶にあるのは、七五三が最初かもしれません。
でも、そのずーっと前!
あなたが、まだ赤ちゃんの頃・・・
ご両親が、あなたの成長を祝い行ってくれた行事があります。
そのひとつが、「お食い初め」です。
お食い初めとは?
お食い初めは、赤ちゃんに、生後初めてご飯を食べさせる祝いの行事です。
赤ちゃんが、乳歯が生えるまにで成長したことを喜び、「この先、一生食べることに困らないように」という願いを込めて行われるものです。
お食い初めの起源や由来は定かではありませんが、古くは平安時代から行われていたと言われています。
昔は、赤ちゃんの生存率が低かったので、きっと「ここまでよく育ってくれた」という喜びや安堵の気持ちも込められていたのでしょう。
お食い初めの時期はいつ?
お食い初めは、生後100日目に行うのが一般的です。
ただ、地域によって違いがあり、110日目や120日目に行うところもあります。
じゃぁ~いつやったらいいの?
という、あなたの声が聞こえてきそうなので、補足しますね^ ^
お食い初めを行う目安は、赤ちゃんに乳歯が生える頃です。
母乳から、離乳食に切り替わる時期でもあります。
乳歯は、生後100日目あたりから生え始めるので、その日が一般的な日取りになりました。
とはいえ、お食い初めは、必ずこの日に行わなくてはいけないという決まりのある行事ではありませんから、生後100日目~120日目を目安に、都合のいい日を選んで行うといいでしょう。
逆に、日数にこだわりたい場合は、生まれた日を1日目として数えてください。
ちなみに・・・
京都などの近畿地方では、生後120日目より遅らせて行う事が多いようです。
これは、食べることを伸ばす(「食いのばし」と言われる)ことで、長生きできるという言い伝えがあるからです。
さて、ここからはお食い初めの行事はどのように行えばいいのか?
そのやり方や献立についてお話ししていきます。
お食い初めはどんな行事なの?
お食い初めは、赤ちゃんに母乳(ミルク)以外の食べ物を初めて食べさせる行事です。
とはいうものの、実際は、食べ物を口元に運んで食べさせる真似をします。
その順番にも決まりがあるのですが、なにはさておき、食べ物が無くては始まりません。
まずは、お食い初めの献立を見ていきましょう。
お食い初め 基本の献立
お食い初めの祝膳は、一汁三菜(ご飯物、汁物、焼き魚、煮物、香の物)が基本です。
- ご飯物 お赤飯が一般的ですが、白米でもかまいません。
栗ご飯やお粥を用意する地方もあります。 - 汁物 「吸う力が強くなるように」という願いを込めて、お吸い物を用意します。
- 焼き魚 日本の祝い事には欠かせない、鯛が一般的ですが、尾頭付きの焼き魚でも構いません。
- 煮物 季節の野菜や、にんじん、大根、蓮根、しいたけ、筍などを、おだしで煮つけましょう。
- 香の物 季節の野菜のお漬物、もしくは、紅白なますなどの酢の物を用意します。
ここまでが、基本の献立になります。
本格的なお膳の場合は、二の膳として紅白のお餅を用意します。
そして、料理ではありませんが、忘れてはいけないのが「歯固めの石」です。
歯固め石とは?
お食い初めの行事の中には、「赤ちゃんに丈夫な歯が生えますように」という思いを込めた「歯固めの儀式」があります。
そこで用いられるのが「歯固めの石」です。
小皿に入れて、他の料理と一緒にお膳に並べます。
歯固めの石は、お宮参りの御祈祷の際に授けてくれる神社もあるようです。
それ以外で用意する方法は、
- お宮参りに行った神社の境内にある石をお借りする。
- 近くに神社がある場合は、お参りをしてから、境内の石をお借りする。
- 近くに河原がある場合は、きれいな小石を拾ってくる。
- 通信販売で購入する。
などがあります。
石は、できるだけ人通りの少ないような場所から拾いましょう。
お食い初めには、熱湯消毒をして、乾かしてから使用してください。
使った後は、きちんと洗ってから、感謝の気持ちを込めて、元の場所にお返ししましょう。
石の大きさや個数に決まりはありませんが、1~2㎝程度のものを、1~2個用意するのが一般的です。
ご参考までにお伝えすると、正式には、赤(茶系)、白、黒の3色の石を準備します。
これで、お膳に並ぶものが揃いました。
では、やり方を・・・と、言いたいところではありますが、その前に、お食い初めに使用する食器について触れたいと思います。
お食い初めに使用する食器は何がいいの?
お食い初めには、漆器や素焼きの食器を用います。
お箸は、白木のものを使いましょう。
注意しなくてはいけないのが、男の子と女の子で、漆器の色が違うところです。
男の子は朱塗りで、女の子は外側が黒塗りで内側が朱塗りのものになります。
なんとなく、逆のような気がしませんか?
これは、色で地位を表していた時代の名残と言われています。
この事を説明するとすれば、奈良時代に制定された「十二冠位」がとても解りやすいと思います。
十二冠位は、「徳・仁・礼・信・義・智」を「大・小」に分けて12の位を定めており、その位を表す色が決まっていました。
最上位である「大徳」は「濃紫」、次の「小徳」は「薄紫」、その後は順に「青・赤・黄・白・黒」が「濃・薄」となって続きます。
このことから、赤の方が黒よりも上位の色だったという事が解ると思います。
今の時代は、男女平等が当たり前になってきていますが、男尊女卑という言葉があるほどに、古い時代において女性の地位は低いものでした。
これらの事を合わせて考えると、漆器の色がどうして男の子と女の子で違うの?という疑問も、解決できるのではないでしょうか
さぁ!ここまで来ると、お食い初めのお膳は完璧だと思います。
大変お待たせいたしました。
お食い初めのやり方は、以下のようになります^ ^
お食い初めのやり方
お食い初めを行う上で悩みの種になっているのは、料理を食べさせる真似をする順番ではないでしょうか。
簡略化した順番も多く紹介されていますが、正式な順番は、
「ご飯物」→「お吸い物」→「ご飯物」→「焼き魚」→「ご飯物」→「香の物」→「ご飯物」→「お吸い物」→「ご飯物」→「歯固めの石」→「ご飯物」→「お吸い物」→「ご飯物」
となっています。
赤ちゃんを膝にのせ、この順番で食べさせる真似をします。
ここで問題なのが、歯固めの石です!
石はどう扱ったらいいの?と、悩むことがあっても不思議ではありません。
歯固めの石の使い方
最初に、お箸を歯固めの石にちょんちょんと軽く当てます。
そのお箸を赤ちゃんの歯茎に、優しくちょんちょんと当ててあげてください。
簡単ではありますが、「石のように丈夫な歯が生えますように」という願いを込めて行いましょう!
食べさせる人は誰?
お食い初めは、本来、親族を招いて行うお祝いでしたが、近年では、赤ちゃんと両親だけで祝うというご家庭も多くなっているようです。
最後に、それぞれの場合において「食べさせる役」をする人のお話しをして、この記事を閉めたいと思います。
親族で祝う場合
集まってくれた親族の中で最年長の人が行い、「養い親」と呼びます。
一番長生きしている人が「養い親」になることで、その人の「長寿にあやかる」という意味があります。
養い親は、赤ちゃんが男の子の場合は男性、女の子の場合は女性と決まっていますから、気を付けてください。
両親だけで行う場合
親族で行う場合に則ると、男の子にはお父さん、女の子にはお母さんが食べさせる真似をするということになります。
が・・・
そこまでこだわる必要もないでしょう。
男の子なら、お父さんが抱っこして、お母さんが食べさせる真似をする。
女の子であれば、お母さんが抱っこして、お父さんが食べさせる真似をする。
近年は、こういったご家庭が増えてきているそうです。
最後に・・・
お食い初めは一生に一度のお祝いですから、ご親族が遠くへ住んでいて一緒に祝う事が出来ない場合は、記念の写真を届けてはいかがでしょうか。
きっと、喜んでいただけると思います。
≪参考≫
お食い初めとは・お食い初めのやり方 / @kuizome.jp
お食い初めの基礎知識!やり方・準備・レシピ・儀式 / All About
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