元旦の朝にお屠蘇を飲むことは、昔からある風習の一つです。
でも、お正月に飲むお酒をどうしてお屠蘇と呼ぶんだろう?
お屠蘇の事を調べようと思ったのは、こんな疑問がきっかけでした。
お屠蘇の由来や意味は、こちらの記事をご覧いただくとして、
ここでは、
- お屠蘇はどんなお酒?屠蘇散に使われる生薬と効能
- お屠蘇の作り方
- お屠蘇の飲み方に決まり事はあるの?
- 屠蘇器とは?使い方は?
この4つのテーマで、お届けいたします。
お屠蘇ってどんなお酒なの?
お屠蘇は、屠蘇散(数種類の生薬を調合したもの)をお酒やみりんに漬け込んだ薬草酒の一種です。
※屠蘇散は「屠蘇延命散」が正式名称です
屠蘇散として調合される生薬は、時代によって種類や数が違っていました。
今でも、5~10種類と幅がありますが、市販されているものだと5~6種類が一般的となっているそうです。
屠蘇散として調合される生薬とその効果
一般的な屠蘇散に含まれる生薬とその効能を、一覧表にまとめましたのでご覧ください。
名称 | 備考 | 効能 |
白朮(ビャクジュツ) | オケラ(キク科)又はオオバナオケラの根 | 利尿作用・健胃作用・鎮静作用 |
山椒(サンショウ) | サンショウの実 | 健胃作用・抗菌作用 |
桔梗(キキョウ) | キキョウの根 | 鎮咳去啖作用・鎮静鎮痛作用 |
桂皮(ケイヒ) | ニッケイの樹脂、シナモン | 健胃作用・発汗解熱作用・鎮静鎮痙作用 |
防風(ボウフウ) | ボウフウ(セリ科)の根 | 発汗解熱作用・抗炎症作用 |
陳皮(チンピ) | みかんの皮 | 健胃作用・鎮痙作用・抗炎症抗アレルギー作用 |
こうして屠蘇散に含まれる生薬それぞれの効能を見てみると、胃腸の働きを良くしたり、のどや気管支を保護する生薬が多くあることが解ります。
中には解熱作用や利尿作用のある生薬があるので、風邪にも効きそうだなぁ~と想像していたところです。
お屠蘇の作り方!
古代中国では、屠蘇散を一晩井戸につるして井戸水に浸けて置き、翌朝取り出したものをお酒で煎じていました。
今、同じようにしようとしても、どだい無理な話です(汗;
さて、お屠蘇の材料は屠蘇散と日本酒そして本みりんです。
ベースとなるのは日本酒とみりんなのですが、
- ドライ(辛口):日本酒のみ
- スイート(甘口):みりんのみ
となりますので、間を取りたい場合は日本酒とみりんを合わせて使ってください。
日本酒とみりんの割合が、2:1だと中口くらいになるかと思います。
お屠蘇は、市販の屠蘇散1袋に対して約300mlのベースを用います。
用意したベースに、屠蘇散1袋を5~6時間程度(長くとも8時間)浸したら出来上がりです。
※濃い味が苦手な場合は漬け込む時間を短くしてください。
また、量を多く作る場合は、長い時間漬け込むようにします。
浸しすぎると濁ったり沈殿物が出てきたり、苦味が強くなったりするので、飲む時間から逆算して作るようにしましょう。
ここで1つ!注意して欲しい事があります。
みりんを使用する場合は、必ず本みりんを使ってください。
みりん風調味料は、糖分やうま味調味料などが含まれているため味が変わってしまいます。
本みりんの代用には、貴醸酒がおすすめです。
貴醸酒は、水の代わりに酒を使用して仕込んだもので、トロっとした甘口のお酒になります。
デザートワインならぬ、デザート日本酒といったところでしょうか^ ^
お屠蘇の飲み方に決まり事はあるの?
お屠蘇は、元旦の朝、家族全員がそろって新年の挨拶を終えた後、おせち料理やお雑煮を食べる前に飲みます。
お屠蘇は、3回に分けて注ぎ、3口で飲み干します。
※1・2は形だけで、3で注いだり飲んだりするのが作法です。
飲む順番は、年少者から年長者へと進めます。
かなりざっくりではありますが、現代ではこの程度を押さえておけば十分かと思います。
加えて、飲む順番には地域差もあるようですから、そのご家庭に伝わってきたものがあるとしたら、そちらを重んじていただければと思います。
とはいうものの、古くから伝わる作法がありますので、参考にされてください。
- 元旦の朝、若水(元旦の早朝に汲んだ水)で身体を清め、神棚や仏壇などを拝みます
- 家族そろって新年の挨拶をかわし、家長が新年の言葉を述べます
- おせち料理やお雑煮を食べる前にお屠蘇をいただくのですが、この時は家族全員が東(日の出)の方角を向きます
- お屠蘇を飲む順番は、年少者から年長者へと進みます
- お屠蘇を飲む時には、「一人これを飲めば一家疾み無く、一家これを飲めば一里病無し」と唱えてからのみます
なお、お屠蘇を飲む順番が最年少者から始まることには、
- 最年少者を毒見役としていた
- 若い人の生気を年長者に渡す
という理由がありました。
屠蘇器とは?
屠蘇器は、名前の通りお屠蘇を飲むための道具です。
屠蘇を入れる「銚子」、屠蘇を注ぐ「盃」、重ねた盃を載せる「盃台」、銚子・盃・盃台を載せる「屠蘇台」が一組となります。
写真は、銚子に銚子飾りがついた状態になります。
なお漆器のものが一般的ですが、陶磁器や金属製のものもあります。
屠蘇器は、神前式の婚礼でも利用されるので、目にしたことがあるのではないでしょうか。
正月用と婚礼用の違いは、銚子の数が正月用は1つで婚礼用が2つというところになります。
屠蘇器の使い方
屠蘇器を使ってお屠蘇を飲む場合、まず銚子に銚子飾りを付けます。
銚子飾りは、正月に訪れている年神様の依り代になると言われています。
きっと、銚子飾りをつけることで年神様の運を取り込もうとしていたんだろうなぁと、古い時代を思ってみました。
そして銚子に出来上がった屠蘇酒を入れたら、屠蘇台に乗せて運びます。
あとは、お屠蘇を飲むわけですが、屠蘇器には大・中・小と3つの盃があります。
正式には3つとも利用しますが、略式では中盃だけを使います。
そこで、「大・小」の盃は屠蘇台の上へはずし、盃台の上に「中」の盃だけを残します。
年少者から順に、飲み進めましょう。
お屠蘇をそそぐのは誰?
お屠蘇は年少者から飲むのが古くからの習わしにはなりますが、飲む人にお屠蘇を注ぐのは誰なのか気になりませんか?
これも決まりがあるのかなと思って調べたところ、2つのパターンがありました。
- お屠蘇は、家長が皆に注ぐ
- お屠蘇を最初に飲む最年少者には最年長者が注いで、次は最年少者が二番目の年少者へ注ぐ、このまま年下から年上へと進んでいく
というものです。
ぶっちゃけ、どちらどうという話はありません。
ただ最初の方法だと、家長には誰が注ぐの?という疑問がぬぐい切れずにいました。
もしご存じの方がいましたら、ぜひ教えていただきたいところです。
三つの盃を使う場合はどうするの?
お屠蘇は、大・中・小すべての盃を使って飲むのが正式です。
その場合は、
- まず小盃で、最年少者から最年長者へ飲み進める
最年長者が最年少者へ注ぐ事から始まり、最年長者が最後に飲む - 次に中盃で、二番目の年少者から最年少者へと飲み進める
最年少者が二番目の年少者へ注ぐことから始まり、最年少者が最後に飲む - 最後に大盃で、三番目の年少者から二番目の年少者へと飲み進める
二番目の年少者が三番目の年少者へ注ぐことから始まり、二番目の年少者が最後に飲みむ
という風になります。
このことを踏まえると、略式であっても「最年長者が最年少者に注いで・・・」という作法がいいように感じました。
また、小盃から順に一度で三杯飲むという飲み方もありましたが、これは家長が皆に勧める場合なのかなぁと思っていたところです。
最後に・・・
お屠蘇が回ってきたけどアルコールがダメという方は、飲む真似をするだけで大丈夫です。
そういった方や小さなお子様のために、お屠蘇のベースを沸騰させてアルコール分を飛ばした煮切り酒を使って、ノンアルコールのお屠蘇を作っておいてもいいですね^ ^
さらに!
作り方は簡単だけど、漬け込む時間やらなにやらが面倒!!
でも、お屠蘇は用意したいなぁ~。
というのであれば、出来上がった屠蘇酒も販売されていますので、そちらを利用してはいかがでしょうか。
《参考》
身近な生活にある薬用植物 屠蘇散 / くすりの博物館
屠蘇散(とそさん)と屠蘇酒(とそしゅ)/ 菊岡漢方薬局
日本酒の貴醸酒(きじょうしゅ)とは? / SAKETIMES
屠蘇器(とそき)の使い方 / 白木屋結納店&白木屋商店
お屠蘇 / 日本名門酒会
お屠蘇の由来と作り方 / THE EPOCH TIMES
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